オンライン診療
オンライン診療とは、パソコンやスマートフォンを用いて、医師と患者がコミュニケーションし、診療を行うことです。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延にともない、「オンライン診療」を知った方も多いのではないでしょうか。病院に行くことなく自宅などから診察・診療を受けることができるオンライン診療は、感染症の不安を減らすだけでなく、病院への移動中の発作を心配する必要がない、リラックスした環境で診察・診療を受けることができるなどの点があります。また、オンライン診療では、マスクをつけずに受けることができるため、お互いの表情を確認しながら会話ができます。
てんかんのオンライン診療は、通常の対面診療の代わりに行うものと、かかりつけ医・主治医と受けるものがあります。また、セカンドオピニオンをオンラインで受けられる場合もあります。
てんかんのオンライン診療
てんかんの診察・診療では、発作や症状などの問診が大切であり、医師は、患者さんの顔色や表情、話し方や雰囲気からさまざまな情報を感じとっています。
パソコンやスマートフォンのカメラ機能を用いたオンライン診療では、触診、脳波の検査や血液検査、緊急時の対応はできませんが、患者さんやご家族の表情や様子が見えるため医師に情報が伝わりやすく、また、医師の顔や表情、身振りや手振りが見えるため、患者さんやご家族が安心して診察を受けることができるとともに、理解も深まるでしょう。
対面診療の代わりに行うオンライン診療
対面診療の代わりに、パソコンやスマートフォンを用いてオンライン診療を受けることができます。
オンライン診療の場合でも、外来診療とかわらず、聞きたいこと、相談したいこと、気になることをあらかじめ書き出しておくと、診療時間を有効に使うことができるでしょう。
オンライン診療を行っているかは、かかりつけ医・主治医にお問い合わせください。
服薬指導も電話やパソコンなどで受けることができます。お薬を配送で受け取ることができる場合もあります。服薬指導やお薬の配送については、主治医や薬剤師にお問い合わせください。
オンライン診療を受ける際のポイント
- オンライン診療を行っているか、かかりつけ医・主治医に確認する
- どのような方法でオンライン診療を行っているか確認する
- 予約する
- 聞きたいこと、相談したいこと、気になることを書き出しておく
- 発作の様子の記録などを手元に用意しておく
- リラックスして話す
- メモをとる
かかりつけ医・主治医と受けるオンライン診療
かかりつけ医・主治医の診察を受けながら、オンラインで専門医にアクセスし、診断や治療に関して助言を受けるオンライン診療があります。このオンライン診療では、かかりつけ医・主治医と専門医が連携して患者さんを診察します。
「てんかんかどうか判断がつかない」や「お薬で発作が抑えられない」などの場合、専門の病院に紹介されます。これまでは、専門の病院が遠く離れている場合、患者さんやご家族はその病院まで行く必要がありました。現在は、インターネットを通じて、遠くの病院へ行くことなく、専門医の助言を受けることができます。
てんかん専門医とは
脳神経領域の専門医のなかで、さらにてんかん診療に精通している医師のことを「てんかん専門医」といいます。日本てんかん学会が認定しており、2020年10月1日現在、全国に716名のてんかん専門医がいます。てんかん専門医がたくさんいる地域もあれば、1名しかいない地域もあるなど、てんかん専門医がいる地域には偏りがあります。
また、てんかん診療を専門とする医師が在籍し、MRIやビデオ脳波などの検査が可能である「てんかん支援拠点病院」は全国23ヵ所、「てんかん全国支援センター」は1ヵ所ありますが、日本に約100万人の患者さんがいることを考えると、専門医、てんかん支援拠点病院の数はまだまだ少ないと考えられます。
セカンドオピニオンを求める
オンラインでのセカンドオピニオンを提供する病院が増えています。
1)セカンドオピニオンとは
セカンドオピニオンとは、納得のいく治療法を選択することができるように、治療の内容やほかの治療選択などについて、「第2の意見」を求めることです。「担当医以外の意見をもらいたい」「治療について説明を受けたが決められない」「他の治療の選択肢がないか知りたい」などの場合に、セカンドオピニオンを求めます。
2)セカンドオピニオンを聞く流れ
セカンドオピニオンを聞く流れの一例をご紹介します。
セカンドオピニオンを聞く流れ(例)
①現在の担当医の意見を聞き、わからないことや不安に思うことなどについて質問や相談する
現在の担当医の意見を十分に聞き、理解することが大切です。そのうえで、なぜ、セカンドオピニオンを求めたいのか、ご自身の考えや気持ちを整理することが大切です。
②セカンドオピニオンを求めることを決める
③セカンドオピニオンを求める病院を探す
④現在の担当医にセカンドオピニオンを求めること、セカンドオピニオンを求める病院を伝える
現在の担当医に言い出しにくいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。「とことん納得して治療を開始したい」「できるだけたくさんの情報を集めて決めたい」など、ご自身の気持ちを伝えるとよいでしょう。
⑤セカンドオピニオンを求める病院に連絡する
予約や受診方法、費用や相談時間、必要な書類などを確認します。
⑥現在の担当医に紹介状や診療情報提供書、検査データなどを用意してもらう
セカンドオピニオンを求める際に重要な情報です。現在の担当医に相談し、用意してもらってください。
⑦セカンドオピニオンを求める病院に予約する
⑧セカンドオピニオンを聞く
⑨現在の担当医にセカンドオピニオンを聞いたことと、その内容について報告する
セカンドオピニオンを踏まえて、これからの治療方針について再度話し合います。
3)セカンドオピニオンを聞く際のポイント
セカンドオピニオンを聞く際のポイントをご紹介します。
セカンドオピニオンを聞く際のポイント
- 伝えたいこと、聞きたいことを書き出しておく
- これまで、どのような検査を行い、医師にどのようなことを言われたかを書き出しておく
- リラックスして話す
- メモをとる
- できれば、信頼できる人に同席してもらう
専門医からのメッセージ
てんかんの専門医であり、積極的にオンライン診療を行っている中里信和先生からメッセージをいただきました。
新型コロナウイルス感染症の予防のために人混みを避けようという社会的背景から、オンライン診療を最近知った方も多いのではないでしょうか。オンライン診療であれば、直接医療機関へ足を運ぶ必要がなく、通院にかかるさまざまなコストが削減されますし、受診に付き添うご家族の負担も軽減されます。
てんかんの診療においては、患者さんの症状を細かく聞き取ることが大切です。患者さんの表情は病状を把握する材料にもなります。患者さんやご家族が自宅などリラックスした環境でマスクを外して診察できるオンライン診療は、適切なてんかん診療の提供という点においても相性がよいと考えています。
てんかん専門医がいる医療機関はまだ限られていますので、お近くに専門医がいない場合やセカンドオピニオンとして専門医に相談したい場合も、オンラインによる対応は選択肢の一つとなります。
てんかん患者さんが適切な診療を受け、負担を減らしながら治療を続けていくために、ぜひオンライン診療を活用いただきたいと思います。
東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野 教授
中里 信和先生
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