最近は手術が可能な患者さんには積極的に脳の手術をするようになってきました。下記の5つのてんかんは外科手術が可能なてんかんとして推薦されており、条件を満たす場合は手術治療が行われる可能性があります。
また、抗てんかん薬2~3種類以上を飲み十分な血中濃度が得られても、発作の回数が多く止まらない場合も手術が考慮されます。精神発達障害や異常な行動がある場合、手術によって発作が消失すると、これらの状態も改善することが知られており、早期の外科手術で発作を抑えることが勧められます。但し、遺伝子異常によるてんかんや、筋ジストロフィーなどの進行性疾患によるてんかんは手術の対象になりません。

外科手術が可能なてんかん
  • 内側側頭葉てんかん
  • 器質病変が検出された焦点てんかん(部分てんかん)
  • 器質病変を認めない焦点てんかん(部分てんかん)
  • 片側半球の広範な病変による焦点てんかん(部分てんかん)
  • 脱力発作をもつ薬剤抵抗性てんかん
手術を行う条件
  • 発作を起こす場所が脳の一部であることが明らかな場合
  • 抗てんかん薬をどのように工夫しても発作が止まらない場合
  • 発作の種類、あるいは発作回数が多いために生活が大きく障害される場合
  • 発作が起こるようになってから3~4年経っても改善する方向にない場合
  • 患者さんの全身状態が良好で手術をしても健康に支障がないと判断される場合
  • 手術をする脳の部分が言葉の障害や手足の麻痺などの後遺症を起こす心配がない場合
  • 手術のための検査や手術後の治療に協力的で手術をすることに同意している場合 

参考:てんかん診療ガイドライン2018

1)手術を受ける前の検査

一般的な検査、通常の脳波検査や可能であれば脳磁図などを検査し、発作が起こる部分が脳の一部だけにあることや発作の状態を調べます。また、CTやMRI、SPECTやPETによる脳の画像診断、知能検査、記憶検査などを行います。
これらの検査により手術が可能と判断した場合には、次のステップとして頭蓋内電極による脳波検査*で焦点をより精密かつ厳密に決定し、長時間記録ビデオ脳波モニター検査で症状との関係を調べ、さらに手術による言葉や記憶への影響を確認します。

*頭蓋内電極による脳波検査:一般の脳波よりも脳内の電気の流れを正確に測定できます。脳を覆っている硬膜という脳の膜の上に直接電源を置いて脳波を測定する「硬膜下記録法」と脳内に直接電極を刺して脳の深い部分の脳波を記録する「深部脳波記録」の二つの方法があります。

2)外科手術治療の方法

代表的な手術として、以下のような方法があります。
但し、手術によって発作が消失するのは約半分の患者さんで、残りの患者さんは発作の減少や抗てんかん薬による発作のコントロールが良くなり、生活の質が向上するのに留まります。

拡大できます 脳の断面図

外科手術治療の主な方法

皮質焦点切除術 一部に限られている焦点に対して、その大脳の皮質部分を切り取る方法です。発作の波の起こり方や広がり方によって切り取る範囲が変わることがあります。側頭葉手術が代表的です。
多葉切除術 発作を起こす部分が側頭葉だけでなく前頭葉などほかの部分(葉)に広がっている場合、複数の葉を切除する方法です。
半球切除術 大脳の片側半分にわたる広い障害がある場合に行われる手術です。
脳梁切除術 脳梁は左右の大脳半球をつないでいる神経線維の束ですが、強直発作、脱力発作、レノックス・ガストー症候群や両側の前頭葉てんかんなどで行われる手術で、発作の波が伝わるのを防ぐ手術です。

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