採⽤‧⼈事を担当している⽅にインタビュー

一人ひとりと「向き合う」ことで道が開ける

株式会社ウィルオブ・ワーク
管理本部 管理部
マネージャー 森 晴貴 さん
サポートグループリーダー 小原 彩歌 さん

⼀⼈ひとりと「向き合う」ことで道が開ける ⼀⼈ひとりと「向き合う」ことで道が開ける

株式会社ウィルオブ・チャレンジは、株式会社ウィルグループの特例子会社として、てんかんのある方を含む、200名以上の障害のある方を雇用しています。採用・人事を担当しているお二人に、障害者雇用を始めた背景や面接時のポイント、採用後のフォローなどについてお話を聞きました。

この記事のポイント

  • 採用面接時からの十分な聞き取りは、お互いの安心に
  • 病状や発作の様子などは人それぞれ。伝えられる環境や関係づくりが大切
  • 向き合い、実感し、つなげる―よく知ることが大切

―十分な聞き取りは、お互いの安心につながる

採用面接時に重視しているのは、「病状や障害の状況をご自身で理解していて、自分の言葉で説明できるか」です。

たとえば、「てんかん」と一口に言っても、発作の様子や頻度、起こりやすいタイミング、苦手に感じるものや予兆、体調悪化時にどう対応してほしいかなどは、人によってさまざまです。採用面接時には、それらを十分に聞き取ることが大切で、その方の病状や障害の状況を詳しく知ることではじめて、会社として受け入れや対応の検討ができます。

そのため、当社では、専門の資格を持つ社員も面接に参加し、服薬の状況など専門的な側面からも十分に話をうかがうようにしています。これは、応募者の方にとっても、「この会社は小さなことも気にかけてくれる」という安心につながっていると感じます。
応募者の方がしっかりとご自分の言葉で説明いただけると、私たちも心配なく受け入れができます。

⼗分な聞き取りは、お互いの安⼼につながる

―本人の声を聞き漏らさないフォロー体制づくり

当社では、障害のある方が多く働いていますが、病状や障害の状況、必要な配慮は本当に千差万別です。個別に十分な対応ができるよう、日頃からフォロー体制を構築しています。

たとえば、心配ごとなどの相談が気軽にできる「フォロワー」と呼ばれる担当者を配置し、日頃から密なコミュニケーションがとれるようにしており、1か月に最低1度は面談を行い、体調や通院の状況、心配ごとなどを確認しています。
また、採用面接時に限らず、専門の資格を持つ社員が社内に常駐し、身近な存在としていつでも心身について相談ができる体制が整っています。
加えて、外部の支援員さんとの連携も大切にしています。支援員さんはご本人が社内では話しにくいことも伝えられる存在です。また、支援員さんからより深い情報が得られることもあります。

フォロワー以外の社員も日常的に「調子どう?」「薬ちゃんと飲んでる?」などの声かけをしたり、小さな変化にも気を配ったりするように心がけています。
ご本人が安心して働けることはもちろん、何か不安や心配ごとがあったときに、相談しやすい・伝えやすいルートが複数確保されているような体制づくりを大切にしています。

生活面や通院・服薬の状況なども含め、本人の声を聞き漏らさないことで、合理的な配慮ができ、体調を良好に維持して業務にあたってもらうことができるのではないかと考えています。

―てんかんのある社員への具体的な対応や工夫

てんかんのある社員への具体的な対応や工夫

―てんかんのある社員への具体的な対応や工夫

当社では、朝に発作が出やすい場合は出社時間を1時間遅くする、業務に慣れるまでは時短勤務にするなどの「時差通勤・勤務時間の調整」、体調にあわせて在宅勤務にするなどの「勤務体制の調整」、通院日に確実に休暇をとれるようにするための「勤務日の調整」などの対応を行っています。

加えて、個人に寄り添った配慮――たとえば、寒さを感じやすく、寒さが体調悪化につながる、という声に対しては、冷房の当たらない席を確保するなど、一人ひとりの症状や特性にあわせてそのつど、臨機応変に対応しています。

「てんかんのために寒さを感じやすくなる」という本人からの申告がなければ、寒さへの対応はできませんでした。私たちがなんとなく抱いている「てんかん」のイメージや、病名から調べた知識だけで対応しようとすると、必要な配慮が十分できなかったり、見当違いの配慮になってしまったりすることになり、仕事の幅を狭めてしまうことになるかもしれません。だからこそ、本人が“伝えやすい” 環境・関係づくりが大切だと思っています。

―大切なのは、「働きたい」想いと向き合うこと

てんかんのある方を含め、これまで多くの障害者雇用を実現してきたなかで感じるのは、病名や障害の程度で線引きをするのではなく、「ここで働きたい」という意欲を持った応募者と、企業がしっかりと「向き合う」ことが、採用の本質であるということです。

双方が向き合い、十分な情報を得られれば、企業側は配慮を行うことができ、安心して働いてもらうことができます。だからこそ、面接時には応募者が状況を伝えやすいような雰囲気づくりと十分な聞き取りを、入社後には日々の関係構築をたえず行っていくことがやはり大切だと思います。

まずは⼈事担当者に近いところから

―まずは人事担当者に近いところから

てんかんのある方をはじめ、初めて障害者雇用を検討されているとしたら、ファーストステップとして、まずは人事担当者に近いところから「向き合う」ことをお勧めしたいと思います。

具体的には、人事を担当されている方と同じ空間、色々なことに気付ける距離で一緒に働く。人事担当者が日々接することで、事前に抱いていたイメージと異なる点や、実際に必要な配慮や対応などがより具体的に見えてきます。そうしたことが実感できると、その後、他部署での雇用のハードルもぐっと下がるはずです。

まずは色々なことに気付ける距離でしっかり「向き合う」。これにより、道が開けていくと思います。

※写真・お名前は、ご本人および株式会社ウィルオブ・ワーク、株式会社ウィルオブ・チャレンジの了承を得て、掲載しています。

株式会社ウィルオブ・チャレンジ

株式会社ウィルオブ・チャレンジ

できることではなく、やりたいことを選べる明日へ

株式会社ウィルグループの特例子会社として、障害のある方により多くの働く機会を提供することを目的に2021年に設立。サステナブルな働きがいと雇用の実現とともに、障害のある方のやりがいやキャリアを共につくり、社会に対して価値のある仕事を創出していくことを目指している。

取材⽇:2023年5⽉26⽇