学校での対応
発作があるからといって行動を制限してしまうと、経験不足というだけでなく、「できない子」という印象を本人が持ってしまい、自信をなくすことにもつながってしまうかもしれません。発作の対応方法や気を付けることなどを知り、必要以上に制限することなく、サポートすることが大切です。
発作が起こったときの対応
発作が起こったときの対応については事前に保護者や主治医と相談し、発作時には、落ち着いて、安全確保を中心に症状に応じた対応を行います。
一覧で見るてんかん発作の症状と対応
てんかん発作の症状と発作の対応について一覧で見られる簡易シートです。重要なところにマーカーをひいたり、学校やクラスでの対応について書きこんでご活用ください。
安全の確保
どの発作にも共通することは、安全を確保することです。倒れそうになったときに支える、まわりにある危険なものを遠ざける、メガネやヘアピンなどを外す、筆記用具を遠ざけるなど、子どもがけがをしないよう注意することが大切です。
さまざまな場面における発作の対応
1)倒れる発作
階段や道路などで倒れた場合は、安全な場所に移動させます。椅子に座っているときに意識を失った場合は、後から体を支え、椅子から床におろします。火や水、刃物や机など周囲の危険なものを遠ざけ、けがをしないようにします。メガネやヘアピン、筆記用具なども危険なため、注意して外します。発作がおさまるまで見守ります。余裕があれば、発作の様子を観察し、どのくらいの間、発作が続いたかを確認、記録すると、診察に役立ちます。
倒れる発作の対応
- 安全な場所へ移動
- 危険なものを遠ざける
- メガネやヘアピンを外す
- やけどやけがに注意
- 発作がおさまるまで見守る
2)けいれんを伴う発作
けいれんを伴う発作の場合は、頭を打ち付けないように、頭の下に薄いクッションや衣服などを敷いて保護します。
けいれんを伴う発作の対応
- 頭の下に薄いクッションや衣服などを敷いて、頭を保護する
3)プールでの発作
プールなど、水中で発作が起こったときは、鼻と口が水面から出るように頭を支えます。発作がおさまった後に、水から引き上げます。
プールでの発作の対応
- 鼻と口が水面から出るように頭部を支える
- 発作がおさまった後、水から引き上げる
4)食事中の発作
飲み込む力が弱い人以外は、食べものがのどに詰まってしまう事故はほとんど起こりません。けいれん中に無理に口から食べものを出そうとする必要はありません。力が抜けたときに食べものは吐き出されます。このときに取り除いてください。
テーブル側に突然倒れ、食器をひっくり返し、やけどをするなどのけがに注意が必要です。
食事中の発作の対応
- 無理に口から食べものを出そうとしない
- 危険なものを遠ざける
- やけどやけがに注意
- 発作がおさまるまで見守る
5)無意味な身振りなどを繰り返す発作
発作中に口をモグモグさせたり、手を動かすなどの動作がみられる場合は、動きを止めようとはせず、危険なものを遠ざけて見守ります。声がけに対する反応を見ながら付き添います。服をたくし上げる場合は、肌が露出しないように配慮します。歩きまわる場合は、無理に止めようとせず、付き添い、危険がある場合には、さりげなく方向を変えるように導きます。
無意味な身振りなどを繰り返す発作の対応
- 動きを止めようとしない
- 危険なものを遠ざける
- 声がけに対する反応を見る
- 付き添う
- 発作がおさまるまで見守る
- 歩きまわる場合は付き添い、危険がある場合には回避できるように導く
6)発作の始まりに意識の曇りがない発作
発作の始まりに意識の曇りがなく、嫌なにおいがしたり、不安な気持ちになるなどの発作の場合は、話を聞いて、気持ちを落ち着かせ、リラックスできるようにします。
発作の始まりに意識の曇りがない発作の対応
- 話を聞く
- 気持ちを落ち着かせる
- リラックスできるようにする
7)発作が止まらない、発作が繰り返す場合
発作が続いて止まらない、または、1回の発作が短くても、意識が回復する前に次の発作が繰り返して起こることを「てんかん重積状態」といいます。発作が5分以上続いて止まりそうにないときは、てんかん重積状態の可能性があります。てんかん重積状態では、脳に後遺症を残す可能性が高いため、緊急処置によって発作を早急に止める必要があります。
重積状態になった場合は、緊急用のお薬を使用するか、病院での治療を受ける必要があります。
保護者や主治医に重積状態の場合の対応やお薬について、事前に確認することが大切です。
発作が止まらない、発作が繰り返す場合の対応
- 5分以上続く発作の場合は、救急車を呼ぶ
- 保護者や主治医から発作が止まらない・繰り返す場合の対応について依頼がある場合は、依頼の通りに対応する
発作中にしてはいけないこと
発作中は、口の中にものを入れてはいけません。口の中を傷つけたり、窒息するおそれがあります。
体をゆすったり、押さえつけたり、大声で名前を呼ぶなどの刺激を与えてはいけません。
発作直後の意識がぼんやりしているときに、水や薬を飲ませてはいけません。窒息や嘔吐を引き起こすおそれがあります。
発作中にしてはいけないこと
- 口の中にものを入れない
- 体をゆすったり押さえつけたりしない
- 大声で名前を呼ばない
- 意識がぼんやりしているときに水や薬を飲ませない
救急車を呼ぶ場合
通常、発作は数分以内におさまり、ほとんどの発作は救急の医療措置を必要としません。
しかし、今までに発作を起こしたことがない、発作が5分以上続く、続けて発作が起こる、呼吸困難がみられる、意識の回復がみられない、もうろう状態が長く続く、病気の徴候がある、けがをし出血がひどいなどの場合は、救急車を呼んでください。
こんなときには救急車を
- 今まで発作を起こしたことがない
- 発作が5分以上続く
- 意識の回復のないまま発作が続いて起こる
- 呼吸困難がみられる
- 意識の回復がみられない
- もうろう状態が長く続く
- 病気の徴候がある
- けがをし出血がひどい
受診が必要な場合
医師の処置を必要とするようなけがをしたときや、発作後に吐き気や頭痛、だるさなどが数時間以上続くときは、受診が必要です。
頭を打ったときに、病院へ連れて行くべきかどうか迷う場合は、様子を見て、回復が遅い場合や、いったん意識が回復したのに、再度もうろうとなった場合は受診させてください。
こんなときには病院を受診
- 医師の処置を必要とするようなけがをした
- 発作後に吐き気や頭痛、だるさなどが数時間以上続く
発作後の対応
1)子どもが眠った場合の対応
発作後に子どもが眠った場合は、衣服をゆるめて、汗をふき、体と顔を横に向けます。無理に起こさず、静かに休ませます。
発作後、子どもが眠った場合の対応
- 衣服をゆるめる
- 体・顔を横向きにする
- 汗をふく
- 無理に起こさず、静かに休ませる
2)もうろう状態の対応
発作後、しばらくの間、もうろうとして歩き回ることがあります。その場合は、無理に止めないで見守ります。自ら危険を回避できない状態なので、危険物は遠ざけ、後から寄り添って保護します。
もうろう状態の対応
- 危険なものを遠ざける
- 付き添う
- けがなどの危険があるときは、さりげなく歩く方向を変えるよう導く
3)発作がおさまった後の対応
発作がおさまった後、普段と同じ状態に戻った場合は、授業に戻らせたり、いつも通りに帰宅させてもよいでしょう。
発作の状態がいつもと違う場合は、保護者に連絡し、対応を相談します。
発作がおさまった後の対応
- 普段と同じ状態に戻った場合は、授業に戻らせたり、いつも通りに帰宅
- いつもと違う場合は、保護者に連絡
お薬の副作用かもしれません
授業中に眠ってしまったり、ぼーっとしてしまう、イライラするなどは、お薬の副作用の影響かもしれません。
お薬の種類や量を変更するタイミングで、このような症状が現れやすくなります。
また、お薬を長く飲むことで起こる症状もあります。
お薬の副作用やお薬の変更など、保護者や主治医に確認し、十分理解しておくことが大切です。
お薬の副作用
- 眠気
- 疲労感
- ふらつき
- ぼーっとする
- めまい
- 食欲低下
- イライラする
- 落ち着かない
- 発疹
- 倦怠感
- 吐き気
- 黄疸
- 出血しやすい
- 青あざができやすい
- 記憶の障害
- 集中力の低下
- 話すのが遅い
- 言葉がみつかりにくい
- 薄毛・抜け毛
- 多毛
など
授業や行事
1)運動について
体育の授業では、発作がコントロールされており、主治医からの制限の指示がなければ、すべての活動に普通に参加させてください。
水泳の授業では、発作がなく落ち着いており、主治医からの制限がなく、十分な監視体制があれば、参加させてください。
発作が起こってもスムーズに対応できるように対応法を知っておくことが大切です。
運動クラブなどでの活動は、通常の監視体制があれば、参加して問題ありません。保護者・主治医にどの程度の運動が可能か確認して、参加できる運動の内容や範囲を決めてください。
子どもの運動への参加は、必要以上に制限しないことが大切です。疎外感を感じさせず、意欲を引き出し、仲間意識を持たせることは大切です。子どもの状況に応じて、対応していくことが必要です。
体育の授業
- どの程度の内容の運動が可能か、保護者や主治医に確認する
- 発作のきっかけとなる要因がわかっている場合は、運動する場所に配慮する
- 翌日まで疲れが残るような強い運動は避ける
- 発作がコントロールされている場合は、主治医から制限の指示がなければ参加させる
- 発作のコントロールが十分でない場合は、主治医の指示を確認する
水泳の授業
- 飛び込みや深く潜ることは避ける
- 発作のきっかけとなる要因がわかっている場合は注意する
- 疲労に注意する
- 発作がなく落ち着いており、主治医からの制限がない場合は、通常行っている程度の十分な監視体制があれば参加させる
- 1ヵ月以内に発作があり、安定していないと思われる場合は、主治医の指示を確認する
2)注意が必要な授業
火や刃物など危険物を扱うことのある授業では、注意が必要です。
実験や実習などの授業では、必要に応じて教員がそばで見守るなどの配慮を行ってください。
発作が起こった場合は、速やかに危険物から本人を遠ざけてください。
火や刃物などを使う授業
- 理科の実験、技術・家庭科の実習、図画工作、美術などの授業では、必要に応じて教員がそばで見守る
- 発作が起こった場合は、危険なものを遠ざける
3)宿泊・校外研修
安全に校外研修を行うために、行事の日程や内容を保護者と主治医に伝え、どのような準備や配慮が必要かを確認することが大切です。
お薬の紛失などに備えて予備のお薬について確認したり、現地の医療機関を確認するなどの準備をしてください。
校外研修中には、お薬の飲み忘れに注意したり、発作が起こってもけがをしないように注意したり、発作が起こらないよう睡眠を十分にとらせることが大切です。
宿泊・校外研修
- 服薬を確認する
- 予備のお薬を確認する
- 現地の医療機関を確認する
- 睡眠は十分にとらせる
- けがに注意する
- 保護者や主治医にどのような準備や配慮が必要か確認する
お薬を飲ませてほしいと言われたら
お昼の服薬が必要な場合や、自分で服薬できない場合、主治医からの指示がある場合など、保護者から依頼がある場合は、対応します。事前に保護者や主治医と相談し、対応について十分理解しておくことが大切です。
1)自分で服薬することができるが、管理が難しい場合
服薬を見守ったり、お薬を飲んだか声がけします。飲み忘れや持参忘れなど、通常通りに服薬できなかった場合の対応については保護者や主治医に確認することが大切です。1回分のお薬を保健室で預かることもあります。
2)自分で服薬できない場合
主治医から服薬内容と学校での対応についての依頼状がある場合は、服薬のサポートをします。主治医の依頼状と保護者の同意書が必要です。主治医や保護者と相談し、対応を確認してください。
3)発作が起こった場合のお薬の投与
文部科学省の通達で、主治医から文書による指示など必要な条件を満たせば、教員がお薬を投与することが可能となっています。主治医や保護者と相談し、どのような場合にお薬を投与するか、お薬の投与方法、お薬が効き始めるまでの時間や副作用などについて、事前に確認してください。