てんかんは、主に抗てんかん薬により治療します。抗てんかん薬はてんかん発作を起こさないように、大脳の過剰な電気的興奮を抑える働きをもっており、発作を起こす可能性のある間は、続けて飲む必要があります。

現在、日本には多くの種類の抗てんかん薬がありますが、薬にはどのような発作に効果があるかが分かっているので、医師は発作のタイプを考慮し、また年齢や性別、体重、合併症や服用中の薬との飲み合わせ、過去の副作用の経験なども考えてその人に合った抗てんかん薬や使用量を選んでいきます。

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1)勝手に他人の薬を飲まないこと

発作の種類によって使用する薬が異なります。どんな薬にも共通しますが、すべての人に効く薬はありません。

2)副作用に注意

抗てんかん薬は、長期にわたって飲むことが多いため、副作用の少ない薬が望まれます。副作用をさけるため、抗てんかん薬を飲み始める時には少量から始めて徐々に量を増やしたり、血中濃度を測定したりします。また、ご自分が飲んでいるお薬によって起こりうる副作用についても、よく理解することが重要です。

3)薬の飲み合わせに注意

抗てんかん薬以外にも薬を何種類か飲んでいる時は、それぞれの薬がお互いに影響しあって、薬の吸収や代謝に影響が現れることがあります。薬物相互作用のため、薬の効果が弱くなったり、強くなり過ぎたりすることがあるので、抗てんかん薬以外に何か薬を飲んでいる人は主治医や薬剤師に相談してください。

また、一部の健康食品(セイヨウオトギリソウ)も抗てんかん薬の作用に影響することがありますので、そのような時には、主治医や薬剤師の先生に相談することが重要です。

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薬の飲み合わせ

抗てんかん薬の多くは、脳全体の働きを抑える作用があり、飲む量が増えると眠気やふらつきなどの副作用を起こしやすいことが知られています。また、飲み始めの早い時期にみられる副作用として発疹などのアレルギー反応、長期間の服用では、肝機能の低下、白血球減少、脱毛などがあります。また、体重増加、食欲低下、体重減少、発汗低下、歯肉増殖などの副作用が出ることもあります。

ただし、副作用の起こり方は患者さんによって違いますので、同じ薬を同じ量飲んでいても、同じように副作用が起こるとは限りません。一般に薬を初めて飲むときには、副作用を避けるために少ない量から始め、薬の効果や副作用を確認しながら徐々に増やしていく方法がとられます。また、定期的な血中濃度測定や血液検査などをチェックして副作用を避けるようにします。

その他に、妊娠可能な女性の場合は、抗てんかん薬が胎児に影響する危険性があるので、妊娠の予定などがある場合には前もって主治医に相談することが大切です。

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副作用

血中濃度測定は、飲んだ薬がどの程度血液中に入ったかを調べるものです。人は同じ薬を飲んでも、体の大きさ(体重など)や年齢、性別、薬の飲み方(回数や量など)などで薬が腸から血液に入る吸収量が変わってきます。そして、吸収された後も、分布(薬が体の隅々にいきわたること)、代謝(薬が化学的に分解などを受けること)、排泄(体内から尿や便などを通じて体外へ出ていくこと)が人によって違うため、抗てんかん薬の血中濃度は変わってきます。
それぞれの抗てんかん薬は、効果を示す血中濃度と副作用が出やすくなる血中濃度がわかっており、血中濃度測定は、それを目安に投与量を調整することを目的に次のような場合に行われます。

血中濃度測定をする場合

抗てんかん薬を飲み始めて、最初にてんかん発作が止まったとき てんかん発作の程度を推測するために測定します。
てんかん発作がおさまらないとき 抗てんかん薬が吸収されている状態をみて、十分な血中濃度なのに効いていないのか、十分な血中濃度にならない原因は何か、抗てんかん薬を規則正しく飲んでいるか(コンプライアンス)、などを調べます。
抗てんかん薬を増加・減量した時、あるいは他の薬を追加したとき 抗てんかん薬の飲む量が変わったときや、他の薬を追加して飲み始めたときに血中濃度を測定することがあります。他の薬を追加したときは薬物相互作用を確認します。
副作用と思われる症状が現れたとき 眠気やふらつきなどの副作用と思われる症状がみられたときに、血中濃度が高すぎていないかを確認します。
定期検査のとき 年に1~2回は定期的に検査を行い、てんかん発作がどの程度の薬の濃度で抑えられているかを確認します。また、薬を減らすときにも、その都度、血中薬物濃度を測定することで、患者さん個々の薬を減量できる範囲が推測できます。
その他 肝臓や腎臓の病気になったときや妊娠したときなどに、薬の吸収や分布、代謝、排泄などの患者さんの状態が変化していないかを確認します。
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服用時の注意点

患者さんによっては、てんかん以外の疾病を併発している方があり、てんかん以外の疾病治療のための薬が処方されています。処方されるお薬によっては、てんかんを悪化させるような薬もあります。もし、そのような薬を他の先生から処方されている場合は、てんかんを診てもらっている医師に伝えることが重要です。

  • アルコール
  • 抗うつ薬:うつ病に使用する薬
  • 抗精神病薬:統合失調症などに使用する薬
  • 気管支拡張薬:喘息などに使用する気管支を広げる薬
  • 抗菌薬*:細菌の感染時に使用する薬の一部。また、一部の抗菌薬と痛み止めを同時に飲んだ時
  • 局所麻酔薬*:麻酔をするときに使用する薬
  • 抗腫瘍薬*:がんに使用する薬
  • 筋弛緩薬:筋肉の緊張をほぐすときに使用する薬
  • 抗ヒスタミン薬*:湿疹や花粉症などアレルギーのときに使用する薬

* 一部の薬がてんかんを起こしやすくするのであって、すべてではありません。

参考:てんかん診療ガイドライン2018

しばらく発作が止まっていたり、副作用を心配するあまり、患者さん自身やご家族の判断で薬を飲まなかったり、回数を減らしたりして、てんかんの症状を悪化させてしまうことがあります。患者さんが医師の処方通りに服薬することを「コンプライアンス(服薬遵守)が良好である」といいますが、最近では、単に処方で定められたように薬を服用するコンプライアンスよりも、患者さん自身が十分納得して治療のために積極的に薬を服用する「アドヒアランス」という言葉が使用され、治療が医師からの一方的なものではなく、患者さんと協力して行われるという考え方が定着しつつあります。
薬は納得したうえで指示されたとおりに飲み、副作用が心配な時は主治医に相談してください。

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